特定技能外国人の住居支援とは?義務・相場・注意点
公開日
最終更新日
特定技能1号の外国人を受け入れる企業には、住居を確保するための支援が法律で義務付けられています。「アパートを借りるだけの話ではないか」と考えがちです。しかし居室面積や費用負担には、出入国在留管理庁が定める具体的なルールがあります。
住居確保支援の内容と3つの手配方法を整理しました。居室面積・家賃負担の基準や、支援を怠った場合のリスクまで、実務で迷いやすいポイントをまとめています。
監修者
目次
住居確保支援は義務的支援の1つ(法的根拠)
住居確保支援とは、特定技能1号の外国人が日本で安心して暮らせるよう、受け入れ企業が住まいの確保を助けることです。単なる福利厚生ではなく、出入国在留管理庁が定める「義務的支援」の1つとして必ず実施しなければなりません。
義務的支援は住居確保のほかにも、生活オリエンテーションや相談窓口の設置など全10項目にわたります。具体的な内容は、あらかじめ企業や登録支援機関が作成する支援計画書に定めます。
支援計画書の書き方や記載必須項目は、特定技能の支援計画を解説した記事で詳しく確認できます。
支援は登録支援機関へ委託することも可能ですが、最終的な実施責任は受入企業に残ります。委託時の注意点は後ほど説明します。
住居確保の3つの方法(寮・社宅/企業契約/本人契約)
住居の確保方法は、大きく分けて3つあります。自社の寮・社宅を提供する方法、企業が賃貸契約をして提供する方法、外国人本人の契約を支援する方法です。
| 方法 | 特徴 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 寮・社宅の提供 | 自社保有の住居に入居させる | ライフライン契約が不要ですぐ生活を始められる | 維持管理コストと文化的配慮が必要 |
| 企業が賃貸契約 | 企業名義で物件を借りて提供する | 勤務先に近い物件を選びやすい | 近隣相場に見合った家賃設定が必要 |
| 本人契約を支援 | 外国人本人が契約者になる | 転居や独立の自由度が高い | 保証人手配など日本語のサポートが必須 |
どの段階から住居準備を始めるべきかは、受け入れ全体の流れを見ると判断しやすくなります。特定技能外国人を受け入れるまでの流れをまとめた記事もあわせて確認してください。
居室面積の基準(1人あたり7.5㎡以上)
出入国在留管理庁の運用要領では、特定技能1号外国人の居室面積を1人あたり7.5平方メートル以上と定めています。約4.5畳に相当する広さです。
制度の全体像は特定技能とは何かでも整理しています。
複数人でルームシェアする場合は、居室全体の面積を入居人数で割った数値が基準を満たす必要があります。3人でルームシェアするなら、居室面積は合計22.5平方メートル以上が必要です。
この基準にキッチンや浴室、トイレ、玄関などの共用部分は含まれません。寝室として使う部屋の面積だけで計算します。
技能実習からの移行者については経過措置があります。技能実習時と同一の住居に引き続き居住する場合に限り、居室面積は1人あたり4.5平方メートル以上で足ります。新たに住居を確保する場合は、7.5平方メートル基準が適用されます。同じ部屋に特定技能と技能実習の人材を同居させる場合は、厳しいほうの基準である7.5平方メートルで計算するのが安全です。
家賃・初期費用の負担ルール(敷金礼金は企業負担)
企業が物件を借り上げて提供する場合、外国人本人に負担させてよい費用は管理費や共益費を含む家賃のみです。
敷金や礼金、保証金といった契約時の初期費用は、受入企業が負担する必要があります。本人が直接契約する場合は敷金・礼金は本人負担が原則ですが、企業が任意で負担することも可能です。
家賃の金額は近隣相場と比較して妥当な水準に設定しなければなりません。企業が家賃で利益を得ることは認められていません。
初期費用の相場は、海外から人材を採用する場合で20万円から50万円程度が目安です。管理費・支援費など受け入れ全体でかかる費用の内訳は、特定技能外国人の受け入れ費用相場を解説した記事で確認できます。
住居支援を怠った場合の指導・改善命令リスク
住居確保支援を含む義務的支援を怠ると、出入国在留管理庁から指導や改善命令の対象になる可能性があります。
受入企業には3つの義務があります。外国人と結んだ雇用契約の履行、支援の適切な実施、各種届出です。いずれかを怠ると、外国人の受け入れ自体ができなくなるおそれがあります。
住居に関するトラブルが是正されないまま放置されると、支援体制そのものの適正性が疑われます。次回以降の受け入れ審査にも影響します。
登録支援機関へ住居確保支援を委託する場合の注意点
住居確保支援は、支援業務の全部または一部を登録支援機関に委託できます。委託すれば実務負担を大きく減らせます。
ただし委託した場合でも、最終的な支援の実施責任は受入企業に残ります。登録支援機関の対応が不十分であれば、企業側の義務違反として扱われる点に注意してください。
委託する業務範囲や報告体制は、契約前に書面で明確にしておくことをおすすめします。登録支援機関が担う義務的支援10項目の全体像は、登録支援機関の義務的支援を解説した記事を参考にしてください。
支援機関を探す段階では登録支援機関のおすすめランキングも役立ちます。
依頼先を検討する際は登録支援機関の選び方のチェックポイントも参考になります。
家賃天引き・退職時の取り扱い
家賃を給与から天引きする場合は、労働基準法第24条に基づく賃金控除の労使協定締結が必要です。加えて、外国人本人の書面同意も求められます。
天引き額の内訳と計算根拠は、外国人が理解できる言語で明示してください。相場から見て不当に高い金額を徴収することは認められません。
外国人が退職した場合も、次の勤務先が決まるまでの間や帰国手続きの期間中は、住居支援を継続する義務があります。退去時期や原状回復費用の負担は、入居時にあらかじめ書面で取り決めておくとトラブルを防げます。
よくある質問
住居確保支援は登録支援機関に任せれば企業の義務はなくなりますか。
いいえ、なくなりません。委託しても最終的な実施責任は受入企業に残るため、定期的な報告確認が必要です。
家賃は外国人本人に全額負担してもらえますか。
管理費・共益費を含む家賃であれば本人負担が可能です。ただし敷金・礼金など契約時の初期費用は、企業契約の場合は企業負担が原則です。
居室面積の7.5平方メートルにキッチンは含まれますか。
含まれません。寝室として使用する居室のみの面積で計算し、キッチンや浴室、トイレなどの共用部分は算入しません。
特定技能2号の外国人にも住居支援は必要ですか。
支援計画の策定義務がないため法的な義務はありません。ただし定着率向上のため、任意で家賃補助や社宅提供を続ける企業もあります。
外国人が退職したら住居支援はすぐに終了してよいですか。
いいえ、終了できません。転職活動中や帰国手続き中は、引き続き住居支援を行う義務があります。
まとめ
住居確保支援は、特定技能外国人を受け入れる企業にとって避けて通れない義務です。方法の選択や費用負担のルールを事前に整理しておけば、行政対応の手間もトラブルも大幅に減らせます。
相談を受けていて感じるのは、企業が気にするのはたいてい居室面積や費用負担の数値のほうだという点です。一方で、退職後の住居支援継続や家賃天引きの労使協定といった「契約終了前後の手続き」は後回しにされがちです。
入居時点のルールにばかり気を取られ、退去や天引きの取り決めを口頭で済ませてしまう企業も少なくありません。書面での取り決めを入居前に済ませておくことが、指導や改善命令を避けるうえで有効な対策です。
海外採用のケースでは特に、本人が来日後に契約内容を見返す機会がほとんどありません。多言語での書面提示までを支援計画に組み込んでおくと安心です。
