特定技能の雇用契約書の作り方|必須記載事項とサンプル要点

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監修者

武藤 拓矢

合同会社エドミール 代表社員

武藤 拓矢

2018年より外国人人材分野で、技能実習・特定技能で600名超の採用から定着まで支援。2025年は商工会議所セミナーに4回登壇し、制度と実務の両面から外国人採用・定着を支援する専門家です。

資格
申請等取次者、外国人雇用管理主任者

特定技能外国人を雇用する際は、通常の雇用契約書とは別の書類が必要です。出入国在留管理庁が定める様式に沿った「特定技能雇用契約書」と「雇用条件書」を作成します。記載事項に不備があると、在留資格の審査や更新に影響することもあります。

雇用契約書と雇用条件書の違い、必須記載事項、特定技能雇用契約に固有の注意点を、特定技能制度の基本と合わせて整理しました。

特定技能の雇用契約書・雇用条件書とは(違い)

特定技能雇用契約書とは、受入れ機関(企業)と特定技能外国人が結ぶ、業務内容・報酬・労働条件などを定めた契約書のことです。雇用条件書は、その契約内容を本人が理解しやすいようにまとめた書面で、両者はセットで作成・締結します。

出入国在留管理庁のウェブサイトには「参考様式第1-5号(雇用契約書)」「参考様式第1-6号(雇用条件書)」が公開されています。多くの受入れ機関がこの様式を利用しています。自社独自の様式を使うこと自体は禁止されていませんが、参考様式が定める記載事項を漏れなく満たす必要があります。

雇用契約の締結は、特定技能外国人を受け入れるまでの手続きのなかでも初期段階にあたります。

雇用契約書の必須記載事項

特定技能雇用契約書には、労働基準法第15条に基づく労働条件通知の内容に加えて、特定技能制度特有の項目を記載します。参考様式第1-5号で求められる主な項目は次のとおりです。

  • 契約期間(更新の有無・基準を含む)
  • 就業場所・従事させる業務の内容
  • 所定労働時間・休憩・休日
  • 賃金の額・計算方法・支払方法
  • 一時帰国を希望した場合の有給休暇の取得への配慮
  • 帰国に要する旅費の負担に関する事項
  • 受入れ機関または登録支援機関による支援内容
  • 労働・社会保険の適用に関する事項

これらは在留資格「特定技能」の許可要件とも密接に関わります。様式の項目を一つずつ照らし合わせながら記入していくのが実務上のやり方です。

特定技能雇用契約に固有の記載事項

特定技能雇用契約には、通常の雇用契約にはない独自の記載事項があります。代表的なものが、契約の効力発生時期と終了時期の定め方です。

参考様式第1-5号では、上陸許可(または在留資格変更許可)を受けたあとに実際の業務へ従事した時点で、契約の効力が生じると定めます。同様に、在留資格を喪失した時点で契約が終了する旨を記載する例も多く見られます。

もう一つ、見落とされやすいのが保証金・違約金の禁止です。受入れ機関や仲介者が外国人本人やその関係者から保証金を徴収したり、違約金を定めたりすることは認められていません。技能実習制度で問題となった経緯を踏まえた措置とされており、契約書に条項を含めないだけでなく、実質的に費用負担を強いる運用にも注意が必要です。

賃金・報酬に関する記載のポイント

賃金に関する記載は、特定技能外国人とのトラブルが起きやすい部分です。雇用条件書には、次の項目を各欄に沿って具体的に記載します。

  • 基本賃金・諸手当
  • 割増賃金率
  • 賃金締切日・支払日・支払方法
  • 控除の有無
  • 昇給・賞与の有無
記載項目確認ポイント
基本賃金同等の業務に従事する日本人労働者と同等以上の水準か
割増賃金率時間外・休日・深夜労働の割増率を明記しているか
賞与・退職金日本人従業員に支給実績がある場合、特定技能外国人にも同様の基準を適用しているか

特定技能制度では「同等の業務に従事する日本人労働者と同等以上の報酬」であることが原則です。国籍を理由に賃金や待遇を引き下げることは認められていません。

有給休暇・一時帰国への配慮

特定技能外国人にも、労働基準法に基づく年次有給休暇が付与されます。加えて、本人から一時帰国の申し出があった場合は、有給休暇を取得できるよう配慮しなければなりません。事業の適正な運営を妨げるなどのやむを得ない事情がある場合は、この限りではありません。

有給休暇をすべて取得済みの状態で一時帰国の希望があった場合には、無給休暇の付与など追加の配慮を検討する場面も出てきます。こうした対応は、雇用契約書の該当項目にあらかじめ記載しておくと、締結後のトラブルを防ぎやすくなります。

母国語併記と説明義務

雇用契約書・雇用条件書は、特定技能外国人本人が十分に理解できる言語で作成する必要があります。多くの場合は母国語で、あわせて内容の説明も欠かせません。日本語能力が高い人材であっても、契約や賃金に関わる専門的な表現は誤解が生じやすいため注意が必要です。

口頭での説明だけに頼らず、母国語併記の書面を用いて内容を確認しながら進めます。「聞いていた条件と違う」といった入社後の認識のズレを防ぎやすくなります。支援計画書に記載する事前ガイダンスの中で、契約内容についてもあわせて説明する運用が一般的です。

作成から締結までの流れ

実務上は、次の順序で雇用契約書・雇用条件書を作成・締結するケースが多く見られます。

  1. 参考様式第1-5号・第1-6号(または要件を満たす自社様式)を用意する
  2. 就業条件・賃金・支援内容を確定し、各項目を記入する
  3. 母国語併記の書面を用意し、本人へ説明する
  4. 双方が内容に合意したうえで署名・押印し、2部作成して受入れ機関・本人がそれぞれ保管する
  5. 在留資格の申請書類に契約書・条件書を添付して提出する

登録支援機関に支援を委託している場合でも、雇用契約書・雇用条件書の作成・締結は受入れ機関の責任で行うのが原則です。賃金などの契約内容を変更した場合は、出入国在留管理庁への随時届出に雇用条件書の写しを添付する運用になっています。締結時だけでなく、変更・更新のたびに記載内容と実態が一致しているか見直しておくと、審査対応で慌てずに済みます。

よくある質問

Q. 自社オリジナルの雇用契約書様式を使うことはできますか?

A. 参考様式の使用が義務付けられているわけではありません。ただし、自社様式を使う場合も、参考様式第1-5号・第1-6号にある記載事項をすべて満たしていることが条件です。

Q. 雇用契約書と雇用条件書は何部作成すればよいですか?

A. それぞれ2部作成し、受入れ機関と本人が1部ずつ保管するのが一般的な運用です。

Q. アルバイト・パートタイムでの契約はできますか?

A. 特定技能は原則としてフルタイムでの直接雇用が前提です。分野によっては派遣形態が認められる例外もあるため、該当分野の要件は個別に確認してください。

Q. 契約内容に変更があった場合、再提出は必要ですか?

A. 在留資格に関わる変更を伴う場合は届出が必要になることがあります。変更内容は必ず記録に残し、契約書・条件書の記載と実態の整合を保つことが求められます。

まとめ

特定技能の雇用契約書は、参考様式第1-5号・第1-6号に沿って、契約期間・賃金・支援内容などの必須記載事項を漏れなく記載する書類です。作成後は母国語併記のうえで本人に説明してから締結します。保証金・違約金の禁止、同等報酬の原則、一時帰国時の有給休暇への配慮など、特定技能制度に固有の論点があります。これらを押さえておくことが、締結後のトラブル防止につながります。

個別の記載内容や解釈に迷う場合は、出入国在留管理庁の公開資料を確認してください。契約を委託している登録支援機関や専門家に相談しながら進めるのもおすすめです。

支援機関を探す段階では登録支援機関のおすすめランキングも役立ちます。

依頼先を検討する際は登録支援機関の選び方のチェックポイントも参考になります。