【2026年版】特定技能「漁業」完全ガイド|制度・要件・申請手続きを徹底解説

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日本の漁業は、少子高齢化による船員不足、漁村の過疎化、水産資源管理の複雑化など、複数の課題が重なっています。2019年にスタートした特定技能制度では、漁業も17分野の一つとして指定され、一定の技能と日本語力を持つ外国人を即戦力として受け入れられるようになりました。

本記事は、特定技能「漁業」の制度理解・要件確認・申請準備に特化した分野ガイドです。登録支援機関の比較やランキング形式の紹介は別記事に譲り、ここでは漁業者・漁協・水産加工業者が押さえるべき実務情報を2026年時点の制度に沿って整理します。

特定技能全体の仕組みは、先に特定技能の制度概要で確認しておくと理解がスムーズです。

監修者

武藤 拓矢

合同会社エドミール 代表社員

武藤 拓矢

2018年より外国人人材分野で、技能実習・特定技能で600名超の採用から定着まで支援。2025年は商工会議所セミナーに4回登壇し、制度と実務の両面から外国人採用・定着を支援する専門家です。

資格
申請等取次者、外国人雇用管理主任者

特定技能「漁業」とは?2026年時点の制度概要

特定技能は、国内で担い手が確保しにくい分野において、一定水準の技能と日本語力を有する外国人を受け入れる在留資格です。技能実習が「技術習得・母国への還元」を主目的とするのに対し、特定技能は人手不足の解消と即戦力就労を目的としています。

漁業分野では、沿岸・沖合いの漁労、養殖管理、水産加工の一部工程などで外国人スタッフの活用が進んでいます。特定技能1号の在留期間は通算最長5年で、家族の帯同は原則できません。2026年1月時点で特定技能の対象は17分野に拡大しており、漁業は引き続き対象分野です。

受け入れ件数は農業・介護・製造業と比べるとまだ限定的ですが、北海道・東北・九州など漁業が盛んな地域では、漁協単位での集団受け入れや、養殖法人による継続雇用の事例が増えています。

特定技能「漁業」で就労できる業務範囲

就労可能な業務は、出入国在留管理庁が定める業務区分に基づきます。主なイメージは以下のとおりです。

  • 漁労作業:網や仕掛けの準備、操網補助、漁獲物の取り込み・選別など
  • 養殖業務:給餌、水質管理、疾病対策、収穫作業など
  • 水産加工(限定):漁獲物の仕分け、下処理、出荷準備など(対象工程は事前確認が必要)

一方、船舶の操船・機関管理など専門資格が必要な業務、経営管理や営業のみの業務は特定技能の範囲外です。雇用契約書や支援計画に記載する業務内容が、実際の配属と一致しているか常に確認してください。

技能実習との違い(漁業分野)

漁業でも技能実習の受け入れ実績はありますが、特定技能は実習終了後の帰国を前提としません。技能実習2号を修了した外国人であれば、漁業特定技能評価試験が免除される場合があり、移行採用のハードルが下がります。制度の違いを横断比較したい場合は特定技能と技能実習・育成就労の違い一覧も参考になります。

漁業は天候・海況・資源量の変動により作業量が大きく変わる業種です。特定技能は「即戦力」前提のため、実習期間中の段階的な技術習得よりも、試験で確認された基礎技能を前提に現場配属する考え方が基本になります。

漁業特定技能評価試験と日本語試験の内容

外国人が漁業分野で特定技能1号の在留資格を取得するには、分野別の技能評価試験と日本語試験の合格が必要です(技能実習2号修了者は技能試験免除の対象となり得ます)。

技能評価試験で問われる知識・技能

  • 漁具・漁法の基礎知識と取り扱い
  • 船上・養殖施設での安全衛生と作業手順
  • 漁獲物の選別・保管の基本
  • 緊急時の連絡・避難の初動対応

試験は筆記と実技の組み合わせで実施され、国内外の試験会場で定期的に行われます。受験料や開催日程は年度ごとに更新されるため、採用計画を立てる際は余裕を持ったスケジュール設計が重要です。

日本語試験の要件

日本語については、JLPT N4相当、またはJFT-Basicの合格が一般的な要件です。船上では短い指示の理解、陸上養殖では記録や報告の読み書きが求められるため、入社後も継続的な日本語学習支援を計画に組み込むと定着率が上がります。

外国人材・受け入れ企業それぞれの要件

特定技能「漁業」で就労する外国人と、受け入れる漁業者・法人には、それぞれ明確な要件があります。

外国人側の要件

技能試験漁業分野の特定技能評価試験に合格(技能実習2号修了者は免除の可能性あり)
日本語力JLPT N4相当、またはJFT-Basic合格など
年齢・健康18歳以上で、就労に支障のない健康状態
在留資格出国・再入国等、入管法上の要件を満たすこと

船上作業では気象・海況の変化に対応するため、日常会話レベルの日本語に加え、安全用語や指差し確認の習慣が現場定着の鍵になります。

受け入れ漁業者(企業・漁協)側の要件

  • 日本人と同等以上の賃金・労働条件を保証すること
  • 特定技能1号に義務付けられた10項目の支援業務を自社実施するか、登録支援機関へ委託すること
  • 不正な仲介手数料の徴収など、コンプライアンス違反がないこと
  • 安定的な経営基盤と、外国人を適切に指導できる体制があること

個人経営の小規模漁業者が単独で受け入れる場合、生活支援や行政手続きの負担が大きくなるため、漁協や登録支援機関との連携が現実的な選択肢です。

受け入れ企業が実施する支援業務(10項目)

特定技能1号の外国人を雇用する漁業者は、法令で定められた支援業務を実施する義務があります。主な内容は次のとおりです。

  • 事前ガイダンス(入国前の生活・就労に関する情報提供)
  • 出入国時の送迎
  • 住居確保・生活に必要な契約支援
  • 生活オリエンテーション(入国後8時間以上が目安)
  • 公的手続きへの同行・情報提供
  • 日本語学習機会の提供
  • 日本人との交流促進
  • 転職・離職時の支援
  • 定期的な面談(3か月に1回以上)と通報体制
  • 入管庁への受入れ状況報告(四半期ごと)

漁村では住居や買い物・医療のアクセスが限られるケースが多く、支援計画の質がそのまま定着率に影響します。自社対応が難しい項目は、登録支援機関への委託を前提に計画を作成してください。

特定技能「漁業」を導入するメリット

漁業現場で特定技能を活用する主なメリットは次のとおりです。

  • 船員・養殖スタッフの確保:試験合格者は基礎技能を備えており、繁忙漁期や出漁体制の維持に寄与
  • 教育コストの抑制:技能実習からの移行者や試験合格者は、短期間の現場研修で戦力化しやすい
  • 事業継続の安定:高齢化で減った出漁回数を補い、水揚げ量の平準化が期待できる
  • 販路・発信の多様化:外国籍スタッフのSNS発信など、新たな販促チャネルにつながる事例もある

一方で、船上の安全衛生管理や長期航海時の生活環境整備など、漁業特有の受け入れコストも見込んでおく必要があります。

申請手続きの流れ|漁業分野の実務ステップ

特定技能「漁業」で外国人を雇用する一般的な流れは以下のとおりです。

  1. 人材の選定:技能試験・日本語試験合格者、または技能実習2号修了者を面接・選考
  2. 雇用契約の締結:業務内容、賃金、労働時間、住居方針などを明記
  3. 支援計画の策定:自社支援か登録支援機関委託かを決定し、支援計画書を作成
  4. 在留資格認定証明書(COE)申請:出入国在留管理庁へ必要書類を提出
  5. 査証申請・入国:COE交付後、本人が在外公館で査証を取得し来日
  6. 入国後支援・配属:生活オリエンテーション、安全研修ののち漁船・養殖場へ配属
  7. 定期面談・届出:四半期ごとの受入れ状況報告など、継続的な法令対応

書類不備は審査遅延の主因です。初めて受け入れる場合は、漁業分野に実績のある支援体制の検討が有効です。漁業に特化した支援機関の比較は漁業分野の登録支援機関おすすめ9選で詳しくまとめています。

COE申請で準備する主な書類

雇用関係雇用契約書の写し、雇用条件書、賃金支払いの説明資料
支援関係支援計画書、登録支援機関との委託契約書(委託する場合)
受入れ機関法人登記事項証明書、決算書類、受入れ体制の説明資料
外国人本人パスポート写し、試験合格証明、履歴書など

漁協が複数の漁家を束ねて受け入れる場合は、配属先・指導責任者・住居の所在を明確にした支援計画が審査で重視されます。行政書士や登録支援機関と事前に書類チェックを行うと、差し戻しリスクを下げられます。

費用の目安(2026年)

受け入れにかかる費用は、人材の所在(海外採用か国内移行者か)、支援の自社実施か委託かによって大きく変わります。おおまかな目安は以下のとおりです。

  • 登録支援機関への委託料:月額1.5万〜3万円程度/人(支援内容により変動)
  • 人材紹介手数料:1名あたり10万〜30万円程度(有料職業紹介を利用する場合)
  • 在留資格申請関連:行政書士費用、翻訳・認証費用など
  • 来日・生活立ち上げ:渡航費、住居初期費用、安全装備・作業服など

漁業は季節変動が大きいため、繁忙期前に入国させるスケジュール調整もコストに影響します。初年度は「採用1名あたり数十万円〜」を見込んで予算化しておくと計画が立てやすくなります。

受け入れ時の注意点|安全管理と生活環境

1. 船上作業の安全とコミュニケーション

漁船は転倒・挟まれ・落水などのリスクが高い職場です。安全マニュアルの多言語化、KY活動への参加、指差し呼称の徹底など、言語の壁を前提にした安全体制が不可欠です。

2. 漁期・季節変動への対応

漁業は繁忙期と閑散期の差が大きく、収入や労働時間が変動しやすい業種です。外国人スタッフにも労働条件を事前に説明し、36協定や休日・残業代の管理を法令どおり行ってください。

3. 住居・生活インフラの確保

漁村では住居・買い物・医療機関へのアクセスが限られることがあります。住居確保、通勤手段、緊急時連絡体制を支援計画に盛り込み、離職やトラブルを未然に防ぎましょう。

4. 登録支援機関の選定

支援業務を委託する場合、漁業・地方漁村での支援実績、対応言語、定期面談の質を確認してください。選定の観点は登録支援機関の選び方に整理しています。業種横断の候補比較には登録支援機関のおすすめランキングも活用できます。

2026年の漁業分野トレンドと成功のポイント

2026年時点では、養殖業での特定技能活用、漁協による複数漁家への配属調整、技能実習修了者からの移行採用が増えています。成功している受け入れ先に共通するのは、現場責任者による継続的な声かけと、地域コミュニティへの段階的な参加です。

ある漁協では、高齢化で出漁人数が不足していたため、特定技能合格者を乗組員として採用。操網補助や漁具管理の基礎を試験で習得済みだったことから、短期研修で戦力化し、年間の水揚げ量を安定させた事例が報告されています。登録支援機関と連携し、住居・生活ルール・安全研修を入国直後に実施したことが定着につながったとされています。

よくある質問(2026年版)

Q. 個人漁業者でも受け入れできますか?

制度上は可能ですが、支援業務・住居確保・安全体制を自社だけで担う負荷は大きいです。漁協や法人との連携、登録支援機関への委託を検討するのが現実的です。

Q. 養殖と漁労では試験が異なりますか?

業務区分により評価内容が異なる場合があります。採用前に、受け入れ予定の業務と試験区分の適合を確認してください。

Q. 5年を超えて雇用できますか?

特定技能1号は通算5年が上限です。2026年時点で漁業分野に特定技能2号はなく、5年経過後は別在留資格への変更、または出国が必要になります。

Q. 転職はできますか?

一定の手続きと入管への届出を経て、同一分野内での転職が認められる場合があります。無断転職は在留資格取消のリスクがあるため、支援機関と入管手続きを事前に確認してください。

まとめ|特定技能「漁業」で担い手不足にどう向き合うか

特定技能「漁業」は、船員不足や漁村の担い手問題に対する現実的な選択肢の一つです。制度・試験・申請・支援義務を正しく理解し、安全管理と生活基盤を整えれば、外国人材の即戦力化と事業継続の両立が可能になります。

まずは自社の業務範囲が特定技能の対象に合致するか、受け入れ体制を自社で持つか委託するかを整理し、専門家や登録支援機関と相談しながら計画を具体化してください。漁業の未来を守るうえで、特定技能は十分に検討に値する制度といえます。